自社株移転の課税等

原則的な考え方の点検

自社株の移転の課税関係を理解することは、事業承継の基本中の基本です。ただし、詳細に検討すると複雑極まりない現状ですので今回は譲渡(贈与も含む)について見ていこうと思います。

株式の移転を考える際に個人と法人に分けて分類すると上記の4つのパターンになります。一方、個人の課税は所得税、法人の課税は法人税と分かれ、譲渡課税の一部である対価ゼロでの生前譲渡(贈与)が相続税となるので整合的に考えると実務的にルールの検索が難しくなるので、これは間違いなく税理士マターであります。

贈与利益の発生という、税法ならではの論点があります。つまり等価交換を原則とした場合、適正価格の対価を支払った場合は渡し手も受け手も課税なし(贈与利益)が発生しませんが。対価が適正対価より過大ならば渡し手(売り手)に贈与が発生し、過少ならば受け手(買い手)に利益が発生する。そこに課税する。

実際にはケースごとに課税方法は多様になりますが、基本はこのように考えます。

対価は適正もあれば、過大・過少もあるけれども、イメージとしては金額に応じてこのように表現される。いわゆる贈与というのは譲渡のうち対価ゼロで渡した場合、であることが分かる。さらに個人の場合は贈与税が課せられる。

移転の具体例をみます。

渡し手の通常の税として、渡す資産の価値増加利益(キャピタルゲイン)に対しては当然に課税され、この資産の値上がり利益に課税するものこそ譲渡所得税そのものです。

よって個人や発行法人以外の法人へ自社株を譲渡する場合は適正価格までは分離課税の譲渡所得税(国税・地方税で20% +復興課税)が課せられますが、過大部分は受け手からの贈与となり贈与税が課せられます。

適正対価というのも難しく、財産評価基本通達に基づく価額が近いと思われます。

受け手が株式の発行法人の場合は、いわゆる自己株買いとなり、渡し手は株式の配当を得たとみなされ『みなし配当』として、配当所得税が課せられます。この場合は課税額により最高税率まで課税されます。贈与部分は論点上みなし贈与部分になりますが、受け手が発行法人の場合はこの部分も配当となるかも知れません要確認事項です。何れにせよ高い税率になります。

受け手が個人の場合は適正額より過少な部分は贈与が発生しますが、過大な支払いは受け手の損失にはなりますが、還付や他の税の通算などの便益はありません。

非発行法人の場合は、過少対価の部分は受贈益が発生したとして法人税の課税の対象になります。一方過大対価の場合は寄付金計上で損金となります。ただしこの損金認定の基準も確認事項です。

自社株は通常の株式のような資産ではなく、純資産の部にマイナスで計上する資本取引となるので、原則、損益は発生しないという事です。ただし発行法人が高額の支払いをすれば、他の株主に価値減少の損失をもたらし過少での支払いは他の株主の価値増加をもたらすので、この場合贈与があったとして他の株主に贈与税が発生する可能性があります


この場合の自社株の処分(保有している自己株を第三者に交付する)は資本取引なので損益取引の結果である課税は発生しません。

適正対価より低い対価を受け取った場合、受け手が法人の場合、渡し手が自社株を保有している間に値上がり益があったとして時価(適正対価)までの値上がり益に課税する。清算課税説という原則から課税されます。受け手が個人の場合は適用されません。

余談ですが、贈与の際、負担付き贈与として、贈与資産に借入金をパッケージで贈与する場合はこの清算課税で値上がり益に渡し手が課税されます。

相続で自社株を取得し、発行法人に譲渡する自己株式の場合は渡し手は譲渡所得(分離申告)になります。

今後については

これ以上の『法人から法人の取引』や、『合併・分割・持株会社等の課税』の検討は現時点では控えておきます。分かり次第発表します。

この分野の問題は、単一の取引が税法三法(所得税・法人・相続)に渡っている事と、各法律がケース別に整理して記述されていない事。依って「税法の記述が無い』のか『私が確認していない』のか判別つかない。という事です。

税務大学校の研究論文を読んでもこの分野は税法が未整備だと書かれています。つまり法律自体に整合性が無い、論点が欠落しているという事だと思います。会社法が改定され判例もそう多くはなく今後も時間が係るという事でしょう。保険太郎の検討も少々時間がかかります。

現時点でも適正対価(適正価額)取得価額については具体的な定義はまだ未確認なところが多く、発表する段階ではございません。